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東京高等裁判所 昭和45年(ネ)2687号 判決 1971年10月29日

控訴人

謝花良明

代理人

渡名喜重雄

被控訴人

小林よしの

代理人

石井成一

外三名

主文

原判決中控訴人敗訴の部分を取消す。

被控訴人の請求を棄却する。

訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。

事実

控訴代理人は、「(一)原判決を取消す。被控訴人の訴を却下する(第一次申立)。(二)仮りに右第一次申立が認容されないときは、原判決中控訴人敗訴の部分を取消す。被控訴人の請求を棄却する(第二次的申立)。(三)訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は控訴棄却の判決を求めた。

当事者双方の主張ならびに証拠の関係は、左に付加するほかは、原判決事実摘示と同一であるからこれを引用する。

一控訴人の主張

(一)  昭和四五年一〇月二六日横浜家庭裁判所において被控訴人に対し失踪宣告がなされ右宣告は同四六年一月二五日確定したので、被控訴人は当事者能力を欠くにいたつたから、本件訴は不適法なものとして却下さるべきものである。《以下省略》

二被控訴人の主張

控訴人主張の失踪宣告の存在およびその確定の点は認めるがその余は争う。

三証拠関係<省略>

理由

一はじめに、本件訴の却下を求める控訴人の本案前の申立について判断する。

<証拠>によれば、「横浜家庭裁判所において昭和四五年一〇月二六日被控訴人(不在者)に対し失踪を宣告する旨の審判がなされ(同庁昭和四四年(家)第七四五号事件)右審判は昭和四六年一月二五日確定し、右失踪宣告の効果として被控訴人は昭和三八年六月二三日死亡したものと看做されること。」が認められ、本件訴状が原裁判所に提出されたのが、右の被控訴人が死亡したものと看做される日よりのちである昭和四三年一二月三日であることは本件記録上明らかである。

そこでこのような場合における訴訟の帰すうについて考えるに、本件の場合は、家庭裁判所によつて当時不在者であつた被控訴人の財産管理人に選任された小林久樹が被控訴人の法定代理人としての権限に基づいて本訴を提起したのであるから、右の訴提起により被控訴人を原告とする訴訟が適法有効に成立したのであり、その後において失踪宣告がなされた結果たまたま被控訴人が死亡したと看做される時期が訴提起前の時点まで遡及したもので、当初から当事者能力を欠いていたのではない。そして、訴訟成立後当該訴訟の当事者に対して失踪宣告がなされた場合、失踪者の地位につき相続等の実体上の承継が起り得べきものであるときは失踪者が死亡したと看做される時期において右承継があつたこととなるが、訴訟上の地位の承継手続は失踪宣告の審判が確定してはじめてこれを執り得るものであるから、失踪者が死亡したと看做される時期が訴提起ののちであれば承継の手続がとれるのに、右時期が訴提起以前に遡及する場合には失踪者の訴訟上の地位を承継する途がないとするのは権衡を失するものといわねばならない。

よつて、本件の場合は訴訟係属中に被控訴人が死亡した場合と同様に取扱うのを相当とするから、被控訴人に対し失踪宣告がなされたからといつて、控訴人主張のように本訴を訴訟の当事者につき当事者能力を欠く不適法な訴として当然に却下しなければならないものではない。(ちなみに、本件訴訟は、口頭弁論終結時において、従来本訴の追行にあたつていた被控訴人の法定代理人において委任した訴訟代理人が存在するから訴訟手続の中断は生じない。)

なお、控訴人は本件訴の却下を求める理由として訴提起当時被控訴人が失踪宣告の要件を備えた不在者であつたことをも主張する。しかし、右のような不在者といえども失踪宣告があつてはじめて死亡したものと看做されるのであつてみれば、失踪宣告の要件を具備しあるいは失踪宣告の申立が家庭裁判所に係属中であるからといつてただちに訴訟要件の欠缺をきたすものではないから控訴人の右主張は理由がない。

そうすると、本訴の却下を求める控訴人の本案前の申立は却下を免れない。《以下省略》

(浅賀栄 川添万夫 秋元隆男)

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